「最後の時間に寄り添うということ」

初めてCPA(Cardiopulmonary Arrest、心肺停止)の対応をしたのは、救急車で運ばれてきた患者さんに対してでした。どうして良いのか全く分からなかったことを今でも鮮明に覚えています。外来での勤務中に、急に心肺停止で搬送されてきた患者さんの対応をすることになり、その時はまさにパニック状態でした。

救急車で運ばれてきた患者さんは、意識がなく、呼吸も止まっていて、心臓マッサージをされていました。医療の現場ではよく見かける光景でもありますが、実際にその立場になってみると、まったく別の感覚がありました。

明らかに「もう亡くなっている」状態の方に少しの可能性を信じて医師・先輩看護師が次々と処置をしていました。私は言われるがまま処置の介助を行っていました。その中で置いてけぼりの家族。廊下でただただ混乱している様子が目に見えていました。「どうしてこうなったのか」「何が起きているのか」という疑問や、理解できない現実に直面し、呆然としているご家族の姿が胸に突き刺さるようでした。

私自身、何とか冷静を保ちながら医療手順に従おうとしましたが、家族の涙を見ていると、自分の感情を抑えることができませんでした。

私はまだ医療者としての経験が浅く、感情をどう処理して良いのか分からず、つい涙を見せてしまいました。冷静さが求められる場面ではあったと思いますが、正直に言うと、家族の悲しみと痛みを前に、どうしても無力感を感じてしまいました。家族に対して不安を与えてしまったのではないかと、自問自答しました。

それでも、冷静に対応することと感情に寄り添うことのバランスは難しく、常に正解があるわけではないということを痛感しています。あの時、家族が見せた不安や悲しみをどのように受け止めるべきだったのか、未だに悩むことがあります。しかし、今ではその経験を通じて、最も大切なのは「最後の時間」を尊重することだと感じています。命の尊厳と、患者さんとその家族の思いに寄り添いながら、どんな場面でも誠実に対応していきたいと思っています。

今振り返ると、その時にもっとできたことがあったのではないかと思う部分がたくさんあります。冷静さを保ちながらも、家族に寄り添い、言葉をかけることができていれば、少しでもその悲しみを軽くできたのではないか、という後悔が残ります。家族にとっては、私たち医療者の冷静さや処置の速さだけでなく、心のケアが最も必要だと感じます。

どんなに難しい状況でも、患者さんと家族の「最後の時間」に寄り添うことこそが、私たち医療者にとって最も大切なことだと確信しています。

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